ケアマネジャーのWORK&LIFE

ケアマネジャーのWORK&LIFE Vol.9

前編「WORK編」

志望を保育から介護に転換。認知症の方の受け皿がない現状に、思い余って会社を設立

 私は元々、短大で保育の過程をとっていたのですが、障害者施設などで実習をしたことで、保育よりも介護の仕事がいいのでは、と思うようになったのが、この仕事を始める一番最初のきっかけかもしれません。ちょうどそのとき、介護福祉士の資格ができるタイミングで、短大でも福祉の専攻科のクラスができることになり、1年勉強すれば介護福祉士の資格も取得できるということだったので、そちらに移ったんです。
 卒業後は老健で介護福祉士として働き始めて、高齢者と障害者の方の介護に携わりました。じきにケアマネとして働くようになったのです介護保険が始まったばかりで、認知症の方の受け皿がなかなかない状態で、「精神病院に入院させましょう」ということもありました。そんな現状をなんとかしようと、2005年に会社を立ち上げ、自宅を宅老所にして利用者さんを預かるようになったんです。最初は一緒に同居する形でスタートしましたが、どんどん利用者の方が増え、私が家を出て、庭に建物を増築していきました。
 また、ケアマネとして仕事をする中で、面接技法やソーシャルワークを理論で学んでいなかったので、そこの学習が足りないなと感じたのと、社会診断も深めないとケアマネのスキルとして十分じゃないなと痛感して、ソーシャルワーカーの資格を取ることにしたんです。
 さらに、認知症の方を受け入れてみて初めて、自分の過去の経験値だけでは支援が難しいということがわかったので、認知症介護の研修にあちこち参加するようになりました。ときには仕事の夜勤明けにそのまま研修に行くこともありましたね。
 そうして認知症ケアやケアマネジメントが少しずつ理解できるようになり、「うちは認知症をはじめとする支援困難と言われる方も支援できるケアをやろう」というスタンスになっていき、会社もどんどん大きくなっていきました。

介護や認知症は他人ごとではない、という思いが大きなモチベーションに

 今では「スローライフ・スローケア」をコンセプトに、大分市と別府市で住宅型有料老人ホームとサ高住、介護保険のデイサービスとホームヘルパーの事業、居宅介護支援事務所を運営し、施設配食サービスにも力を入れています。さらに、弊社のサ高住に住んでいる方を含めて、地域の方のご支援もしています。おかげさまで周囲のサポートもあり、今ではそこそこの規模になったと自負しています。
 ここまでこれたのは、「介護も認知症も将来の自分のことなのだから、なんとかせんといかん」という思いに尽きると思います。言い換えれば、人ごとだと思っていないので、この仕事ができているということ。自分のことなので頑張れるし、頑張るしかないですもんね。
 今は管理業務がメインではありますが、ケアマネとして大切にしてきたのは、ご本人の価値観に合わせ、その方が求めている関わり方から入ることです。例えば認知症の方は、支援する人・される人という関係性のせいで、自尊心をすごく傷つけられていることから介護拒否という状況になるケースもあるとおもいます。そういった「介護なんていらない!」という人に対して、「私は介護の専門職です」と説明することが抵抗になるようなら、「地域でこの辺回ってるんですよ、最近どうですか?」「ときどき来るけどいいかな?」など世間話だけで介護の話はしないで帰ることもあります。
 あとは、服装や話し方なども、相手に合わせるようにしています。相手の方がどう見てもらいたいと思っているか、本人のセルフイメージが大体把握できたら、そこを大事にして関わるのが大切だと思います。ただ、すべて相手次第のことなので、こうしたらいいとは一概には言えないですね。

介護の課題は山積み。また、様々な問題をクリアできるような事業を展開したい

 今、大きな課題だと感じているのは、介護やケアマネジメントの本質が理解されておらず、介護保険制度がケアやケアマネジメントに合った制度になっていない点です。ケアプランを構築するプロセス(関係性の構築)にお金がつかないから、居宅も包括も支援しにくい状況になり、支援困難ケースにつながることが少なくないのかもしれません。
 実は大分県は自立支援型の先進地で、介護度の認定を5年間で5%下げているんです。それはご本人がリハビリを頑張ったのか、医学モデルで頑張ったのかはわかりませんが、制度が福祉から切り離されて、「介護保険から卒業することが大切」という、今を精一杯生きている人にとって苦しい風潮になっているのがちょっと怖いなと。支援を受けながら自分の生活を主体的に決めるという自律がないがしろにされている印象があります。
お金のことは当然考えないといけませんが、これから国の形をどうするのかを考えていかないといけないのではと感じています。
 また、この仕事は自分の理念で始めましたが、介護保険制度の限界を感じていますし、介護だけでなく8050問題や引きこもり、子供のいじめや貧困など、様々な問題が善意のボランティア頼りにならないようにしたいです。ボランティアは「人的ライフライン」ではないので「事業」としてどうすれば継続できるかを考えていきたいと思っています。
 そして、今は強い人がより強く有利に生きやすい環境になっていると感じています。そこからこぼれ落ちている方も生きやすい社会になるよう、民間企業として何ができるのか、専門職の一人として何ができるのか?をいつも考えています。とりあえずは、高齢者や認知症で元気な方や、引きこもりの方が社会参加できる場を提供したいと思っていて、就労事業など検討しながら、地域の企業さんと連携して少しずつ動いています。
 また、どんな目標も弊社のスタッフの力がなければなし得ないことなので、後進を育成するのも大きな仕事ですね。医療で治せない老化や認知症、障害を抱える方を支援する介護福祉職の人材を大切にしないといけないと痛感しています。

「食」はとても大切。地元の食材を使い、手作りした料理にこだわって提供

 やはり食事は大切なので、当社で運営する施設でも、調理は外注せずできるだけ地元の食材を使って、手作りしたものを提供することを心がけています。もちろん、「宅配クック123」さんのような宅配弁当も大切なものだと思っていて、弊社でも宅配もやりたいなと思っていますが、現状ではできないというのが正直なところで、ノウハウを教えてもらいたいぐらいです(笑)。
 また、大手の宅配弁当事業者さんは、色々な地域で展開できるのが強みだと思うので、ぜひ地元の食材や、なじみ深いお醤油やお味噌を使うなど、風土にあわせた味付けや郷土料理も意識してもらいたいところです。やはり動けなくなっても食事は大切なものですし、最後の楽しみでもあると思うんです。それが例えペースト食であっても、ずっと食べていた料理や味なら、安心できるのではないでしょうか。

※来月は後編の「LIFE編」をお届けします。ぜひご期待ください!

・株式会社福祉の杜いまじん
・社会福祉士・主任介護支援専門員・介護福祉士・大分県認知症介護指導者・認知症ケア専門士
・工藤美奈子
短大の福祉専攻科を卒業後、老人保健施設で勤務し、介護福祉士として仕事を始める。その後、ケアマネの資格を取得して勤務していたが、社会福祉士の資格の必要性を感じ、通信教育の福祉大学で学んで国家資格を取得。また、介護保険導入当初、認知症の方の受け皿がない現状を見て、2005年に「有限会社(現株式会社)福祉の杜いまじん」を設立し、自宅で宅老所を開設。2019年現在、大分市南大分と別府市で在宅介護サービス事業のほか、有料老人ホームを3棟、サービス付高齢者向け住宅を2棟運営している。